LTEはソフトバンクやdocomoが使用している通信方式、WiMAXはKDDIグループのUQコミュニケーションズが提供している通信方式です。ここでは、技術的な違いをざっくりと述べ、口コミ情報を交えながら、それぞれの方式のメリット・デメリットについて解説していきます。
LTEは通話用の規格の発展版、WiMAXは純データ通信用
携帯電話によるデータ通信は、現在のSMSに相当するショートメッセージが実装された時に始まります。
この頃の携帯電話の通信方式はアナログで、ショートメッセージは文字データをアナログ波(音声)に変換してやり取りされていました。
その後ショートメッセージが画像も送れる「写メ」に進化し、携帯電話でもWebページを閲覧できるようになります。データ通信の需要が高まったので、携帯電話はデジタル化し、音声をデジタル信号に変換して送受信されるようになります。
この携帯電話でのデジタル通信の機能を強化し、高速なやり取りを可能にしたのがLTEです。
携帯電話の通信規格では第四世代に属するので、「4G」と略称されます。
⭐️携帯電話の世代交代
通称 | 通信方式 | サービス期間 | |
---|---|---|---|
第一世代 | 1G | アナログ | 2000年に終了 |
第二世代 | 2G | デジタル | 2012年に終了 |
第三世代 | 3G | デジタル | サービス提供中 |
第四世代 | LTE・4G | デジタル | サービス提供中 |
一方、WiMAXは音声通話のことは考えず、純粋に高速データ通信用として生まれた規格です。
このため、初期においては携帯電話回線利用の通信よりも、速度的に有利でした。
しかし携帯電話では年々データ通信の比率が高くなり、音声通話はそのおまけ的な扱いになってきているので、実質的にはLTEとWiMAXは同じようなものになりつつあります。先にLTEは「4G」と呼ばれると書きましたが、WiMAXも後から「4G」に属すると公式に認定されています。
速度差は体感できるか
LTEとWiMAXを比較する、というと多くの人がまず関心を持つのが、「どちらが速いのか」ということです。
現在、カタログスペック上ではWiMAX2+の方が、LTEよりも高速に通信を行えるとされています。しかし、無線通信の場合、通信環境の違いによって速度は大きく変化し、理論上の最大速度はあまり大きな意味を持ちません。
速度面で「WiMAXだったら可能だったがLTEでは無理」というものはまず存在しないので、この点については「それほど気にする必要はない」ということを覚えていればいいと思います。
口コミで最も話題になるのは…
無線データ通信に関する口コミ情報で話題の中心になるのはずばり「速度制限」です。先に「カタログスペック上の最高速比較に意味は薄い」と書きましたが、その理由のひとつがこの速度規制になります。
道路に例えるとわかりやすいでしょう。
設計上の最高速度が130キロの道路があったとしても、100キロまでの速度制限が課せられていたら、30キロの差分は意味を持たなくなります。
これと同じことです。道路の場合は運転者が意図的に速度違反をすることができますが、データ通信ではそれはできません。
かつてWiMAXでは「3日間のデータ転送量が1GBを超えたら速度制限」としており、この時期に利用者から猛反発を受けました。今でもネット上に残っているWiMAXへの悪評の大部分はこれに関連したものです。しかし、その後WiMAX側が「3日で1GB」を「3日で3GB」に改め、実際に3GBを超過しても必ず速度制限のペナルティを課すとは限らなくなってからは、批判も影を潜めるようになっています。
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
転送量 | 0.5GB | 0,5GB | 3GB | 0.5GB | 0.5GB | 0,5GB | 0.5GB |
制限 | なし | なし | なし | 制限 | 制限 | 制限 | なし |
3日間の合計 | ← 4GB → | ||||||
← 4GB → | |||||||
← 4GB → | |||||||
← 1.5GB → |
「3日で3GB」の速度制限ルールの例。3日間の合計転送量が3GBを超えた翌日から制限され、下回った翌日から解除されます。
対するLTE側は、特にこれといった悪評もよい評価も目立ちません。データ通信専用ということで、WiMAXがマニアの関心を集めたこと、そのWiMAXが速度制限で悪評をほしいままにしたことの影に隠れてしまったのがその原因でしょう。
実用上のメリット・デメリット
実際に導入・利用していく場合、大きな問題になるのは最高速度よりも利用可能エリアの方です。
LTEの場合、携帯電話の通信網を利用しているわけですから、利用可能エリアは同じキャリアの携帯電話のそれと全く同じです。つまりソフトバンクの4G携帯電話を持っていて、それが使える場所ならソフトバンク・ワイモバイル系のモバイルルータも問題なく使える、ということになります。
WiMAXの場合、ネットワークが携帯電話網と独立しているので、利用可能エリアかどうかはメーカーの提供するエリアマップを参考にするしかありません。
もっとも、最近の機種ではWiMAXの通信網だけではなく、auのLTE通信網を使ってデータ通信をできるモードを搭載した機種もあるので、こちらだとauの携帯電話が繋がる場所なら使える、ということになります。
ただこのような相乗りが進むと、WiMAXとLTEの境界はさらにあやふやなものになっていきます。モバイルデータ通信は、将来的にはLTE主導の形で統合されていくようになる、と言われているので、そろそろエンドユーザーはWiMAXだLTEだといった通信方式の違いはあまり気にしなくていいのかも知れません。
それよりも注目すべきは、利用可能なデータ転送量の上限と、制限が課せられた場合の速度がどれぐらいになるかといったあたりです。