生成AIが生み出したコンテンツの著作権侵害が問題になっています。
実際には、生成AIに関する法律がまだ整いきっているとは言い難い状況です。
この記事では、生成AIを利用する上で理解しておきたい著作権や著作権侵害、著作権侵害に対する訴訟の実例について紹介します。
目次
著作権侵害とは?
CはtGPTの登場以来、生成AIはさまざまな分野で取り入れられています。
日本ではまだ法律が追いついていませんが、著作権侵害に関しては議論されつつあります。
今後生成AIを利用することで著作権侵害を侵してしまう危険性があるので知識として理解しておきましょう。
著作物を作成した人に許可を得ずに勝手に使用すること
著作権侵害とは、著作物(テレビ番組や動画、写真、漫画、小説などほぼすべて)を作成した人の許可なる勝手に使用することを指します。
わかりやすい例は以下のとおりです。
- テレビ番組を勝手に動画配信サイトにアップロードする
- 映画を要点だけまとめたりテロップをいれて10分程度にまとめる(ファスト映画)
- ネットにアップロードされている写真を勝手に自分のBlogや動画に使う
- 発売されてすぐの週刊漫画を動画サイトに投稿する
- SNSのアイコンを著名人・有名人の写真にする
などがよくある著作権侵害です。
現在はTVerなどでテレビ番組がネットでも見られる時代ですが、まだまだYouTubeなどに違法でアップロードされているのが現実です。
著作権侵害をすると民事・刑事ともに処罰がある
著作権侵害をすること科せられる処罰は、民事・刑事ともにあります。
民事で訴訟を起こされた場合に科せられる処罰は以下のとおりです。
- 侵害行為の差し止め
- 損害賠償請求
- 不当に得た利益の返還
- 名誉回復のための措置
許可なく使ったコンテンツの停止、使われたことで損害を被ったことへの賠償金の支払い。
利益を得ていた場合は返還、著作権者の名誉を毀損した場合は名誉回復に努めるように促されます。
また、刑事処罰は以下のとおりです。
- 10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金
動画投稿サイトやSNSなどに許可なく投稿(違法アップロード)をすることで民事・刑事共に処罰の対象になり得ます。
ただ、著作権侵害は権利を持つ人が訴えを起こす親告罪が必要なので、ほとんどの人が罰則を受けていないのが実情です。
著作権侵害で罰せられた実例:漫画村
著作権侵害で罰せられた事件として大きな事象は、さまざまな漫画を無料で読めてしまう「漫画村」です。
漫画村の運営者の方が課せられた罰則は以下の通りです。
- 民事罰:17億円の損害賠償金
- 刑事罰:懲役3年、罰金1,000万円、追徴金約6,257万円
出版社などが損害を受けた被害額は3,200億円を超えるとも言われています。
損賠賠償金としては非常に高額ですが、実際の被害額を考えると妥当以下と言っても過言ではありません。
生成AIが著作権侵害になり得る2つのポイント
では、生成AIが生み出したコンテンツが著作権侵害になり得る2つのポイントを紹介します。
ビジネスだけでなく、個人のウェブサイトやSNSなどでも生成AIを使って運用を考えている方は必ず理解しておきましょう。
類似性
類似性とは、既にあるコンテンツに表現方法が似ているということを指す用語です。
すごく簡単な言葉で表すなら、「真似をして作ったコンテンツ」ということです。
企業や団体などのロゴなどで問題になることは多々ありますが、生成AIが生み出したコンテンツでも類自性が認められれば処罰の対象になり得ます。
依拠性
依拠性とは、既にあるコンテンツがあることを知って複製や真似をしたことを指す用語です。
論点になるのは、コンテンツを生み出すタイミングに「知っていた・知らなかった」という点です。
例えば、趣味で活動しているバンドのオリジナルソングを、有名バンドが似たようメロディーの楽曲を生み出した場合は、著作権侵害に当たらない可能性の方が高くなります。
現代は、有名人でなくても、個人がYouTubeなどにオリジナルソングを投稿できたり、イラストや漫画などもSNSなどで投稿できる時代です。
人間ならどこかで見た・聞いたことがある場合もあります。
ただ、生成AIの場合は依拠性を証明するのは非常に困難といえます。
生成AIの著作権侵害で考えるべき2つの基準
生成AIに待つわる著作権に関して、2つの基準で考える必要があります。
開発・学習段階と生成・利用の2つの段階です。
開発・学習(インプット)
生成AIは、インターネット上にあるデータを学習し、その学習したデータを新たなデータとして生成します。
開発や学習段階においては権利者の許可なく利用することが許されています。
ただ、有料コンテンツなど制限がかかっているコンテンツに関しては著作権者の許可を必要とするので、開発段階で制限する必要があります。
ただ、開発や学習段階は生成AIの利用者にはあまり関係ないと言えますが、生成したコンテンツが著作権を侵害していることも考えられるので注意しましょう。
生成・利用(アウトプット)
生成AIが生み出したコンテンツを利用して利益を得る場合や、販売をする場合には著作権の侵害をする危険性があります。
商用利用可とされている生成AIサービスも増えていますが、そのサービスによって著作権に関する仕組みは変わってきます。
すでに著作権が切れているデータのみを扱っているサービスなら著作権侵害の危険性はありません。
ChatGPTやGemini(旧Google Bard)などの誰でも使えるサービスを利用する場合はしっかりと著作権侵害していなかチェックが必要です。
生成AIを使っても著作権侵害にならない2つのケース
では、著作権侵害にならない2つのケースを紹介します。
生成AIを使った場合でも当てはまるので覚えておきましょう。
著作権法第47条5項
著作権法第47条5項とは、軽微な利用(著作権者の不利益にならない程度)であれば著作権者の許可なく利用できるというルールです。
生成AIを利用する上で、必要最低限の著作物の利用は許されているということです。
私的利用
私的利用の範囲内に収まる場合は、著作権者の許可なく複製や生成などを行うことが可能です。
私的利用とは、個人や家族内などで利用する場合に限られます。
ただ、個人や家族内で使う場合であっても、クラウドやサーバーを介して共有する場合は、公衆送信権の侵害になり著作権に引っかかります。
テレビ番組を自宅の保存ストレージに録画して家族で見たり、BDやDVDに複製すること私的利用の範囲内ですが、複製したものをネットにあげたりクラウドに保存するのはNGです。
SNSで使う場合は、私的利用の範囲を脱するため、著作権侵害になる得るので注意しましょう。
【生成AI】著作権侵害に対する訴訟の実例
では、生成AIによる著作権侵害の実例を3つ紹介します。
ニューヨークタイムズによる訴訟
ニューヨークタイムズが、ChatGPTの開発に関わったOpenAIとマイクロソフトに対して許可なくChatGPTが学習をしたとして数十億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしました。
米国作家による訴訟
「ゲーム・オブ・スローンズ」の作者ジョージ・R・R・マーティンを含めた数名の作家がOpenAIに対し訴訟を起こしました。
ChatGPTが作家の許可なく著作物のデータを使っていることが問題視されています。
画像コンテンツを勝手に使用したことへの訴訟
中国では、個人が生成した画像コンテンツを他のSNSユーザーが許可なくSNSに利用したことで著作権侵害の訴訟を起こした実例があります。
裁判所は、著作権者の権利を認め、著作権侵害を認めるという実例も出ています。
まとめ
生成AIの著作権侵害や、著作権侵害に対する訴訟の実例について紹介してきました。
私的利用で生成AIを使うなら、著作権を侵害にはなりませんが、SNSなどで使う場合でも侵害に当たる場合があります。
ネット社会を生きる上で、著作権に関する知識は持っておくにこしたことはありません。
生成AIを利用する方は、身を守るためにも著作権について理解しておきましょう。