ディープフェイクの作り方や、簡単に作成できるツールを紹介します。
パソコンやツールに詳しくない人でも、簡単にディープフェイクの動画を作成できるツールはあり、パソコンやスマホで使えるツールが多く出ています。
ディープフェイクは詐欺などの犯罪にも使われることもあり、また有名人のフェイクを作成することは名誉毀損などに当たることがあるため、使用する際には注意が必要です。
目次
ディープフェイクとは?
ディープフェイク(Deep-Fake)とは、「ディープラーニング(Deep-Learning: 深層学習)」と「フェイク(Fake : 偽物)」を合わせた造語です。
顔を入れ替えた動画が多いですが、体を入れ替えた写真や動画、さらにはAIで作成した音声と合成すしたフェイク動画もあります。
アメリカのトランプ大統領や、日本の岸田首相のフェイク動画が拡散して話題になったこともあります。ディープフェイクは、すでに日本でも身近な技術といえるでしょう。
ディープフェイクの仕組み
ディープフェイクの「仕組み」を簡単に説明します。
元となる画像や動画に、組み合わせたい「パーツ」を用意してAIなどのツールを使って以下の工程を自動的に行います。
- データ収集
- モデル作成
- ビデオや画像を作成
これら一連の作業をこなし、AIを使って精巧な偽物画像や動画を作るのが、ディープフェイクの技術です。
ディープフェイクはどうやって作る?
ディープフェイクは、人工知能(AI)と機械学習技術を使用して、本物と見分けがつかないような偽物の動画や画像を作成します。
特定の人物の顔などを模倣するために使用されるのが「データセット」と呼ばれるデータです。元となる画像が多いほど、合成された動画は自然です。
本物の顔を学習するAIモデル(学習の手法のこと)や、その顔をターゲットの顔に置き換えるモデルなどが使われ、それらを「訓練する」というプロセスがプログラムによって行われ、リアルで説得力のある映像が生成されます。
ディープフェイクの種類
ひとくちに「ディープフェイク」といっても、いろいろな種類があり、よく使われる「合成方法」には、以下のようなものです。
- 顔スワップ(入れ替え)
- リップシンク(音声に唇の動きを合わせる、いわゆる「口パク」)
- 表情操作
- 音声合成
- 全身合成
最近のネット上で話題になっているフェイク動画は、これらの合成技術を高度に合わせたものです。それによって、その人物が現実には言ったりしたりしてしないのに、さもその人が発言したり行動したりしたような偽動画を作成できてしまいます。
パソコンやスマホでもディープフェイクが作れるサービスが続々登場している
単純に顔だけを入れ替えるのは原始的なディープフェイクですが、それだと不自然さが目立ち、すぐにフェイク動画と見分けがつきます。
つなぎ目や動きを「なめらか」にするには高度な技術が必要です。
今までは、映画のようなハイクオリティなディープフェイク動画を作成するには高度な技術やソフトが必要でしたが、最近ではそれが個人でも手軽にできてしまうサービスもあります。
ある程度の出来栄えのフェイク動画くらいなら、パソコンやスマホのアプリを使って作成することも可能です。
ディープフェイクが簡単に作成できるツールやアプリを紹介します。
パソコンやWebサイトでディープフェイクを作れるサービス
パソコンでディープフェイクが作成できるツールには、ブラウザ上で操作できるものなどがあります。
無料で利用できるものもありますが、機能や回数に制限があり、有料プランに加入することで制限がなくなる「サブスク制」のサービスが多いです。
それぞれのツールの特徴についてご紹介します。
【Deepfakes web β】ハイスペックPC不要!テレビでも紹介された作成ツール!
「Deepfakes web β」は、元となる2つの動画をオンライン上のディープフェイクを作成する動画作成サービスにアップロードするだけで、特別なスキルがなくてもフェイク動画を作成することができるサービスです。
また、「Deepfakes web β」は有料サービスで、利用するには会員登録が必須となっているため、メールアドレス等の必要情報を入力し、登録を行なってください。
利用料は、25時間の使用権が4,980円で販売されています。4,980円は高額に感じる人もいるかもしれませんが、高度な処理性能を有したGPUを使用するため、これ以上の値下げが難しいとされており、価格に見合った価値のある高性能なツールです。
操作に慣れるまでは、作成に時間がかかってしまうかもしれませんが、慣れてしまえばその後は短時間で簡単に別の動画や写真の顔をすげ替えることができます。特殊な技術を持っていなくても簡単に高いクオリティのフェイク動画が作成できるおすすめのツールです。
【FakeApp】解説動画あり!無料で使える
上記の「Deepfakes web β」は有料ですが、「FakeApp」は無料でファイ駆動がの作成ができるツールです。AIテクノロジーを駆使し、写真上の顔を動画上へインサートすることができるようになっています。
完成した動画は、非常にクオリティが高く、リアルなフェイク動画を作成することができます。
対応スペックは以下の通りです。
ハードウエア
OS | Windows7 / Windows10 |
MEM | 制限なし |
CPU | 8GB以上 |
GPU | NVIDIA製品/CUDA対応製品/MEM2GB以上 |
ソフトウエア
fekeapp ver2.2 |
CUDA9.0 |
microsoft visual basic 2015+update |
FakeAppの解説動画はこちらから見ることができます。
簡単で、さらに無料でフェイク動画が作成できる便利なツールですので、個人で楽しむ分には問題ありません。
ただし、他人に迷惑や損害を与えないことは前提として理解した上で利用しましょう。
【Avatarify】著名人とリモート会議?ZoomやSkypeで使えるツール
「Avatarify」は、取り込んだ顔写真が話しているかのように見せて、zoom等のオンライン会議に参加することができるデープフェイク作成ツールです。
2020年3月に開発され、2020年7月はにiPhone版もリリースされていますが、ここではPC版についてご紹介します。
Avatarifyにアップロードした顔写真がアバターの役割を果たし、WEBカメラで自分の顔を読み込むことで、自分の表情に合わせてアップロードした顔写真が動く仕組みになっています。
Avatarifyを利用するには、プログラミングの知識がある程度が必要になることと、利用するPCに関してもある程度ハイスペックなゲーミングPCを用意する必要がありますので、誰でも気軽に使えるわけではないという点に注意してください。
なお、Avatarifyは自分の顔(表情)とアバターがリンクするように作成されたフェイク動画の作成ツールですが、現段階においては声を変化させることはできませんので、話す時の声はご自身の声のままです。
スマホでディープフェイクが作成できるアプリ
パソコンがなくても、スマホでディープフェイクを作成できるアプリもあります。
パソコンのツールに比べると、機能や精度が劣る傾向がありますが、手軽に使えるのがスマホアプリのメリットです。
スマホ用ディープフェイク作成アプリには、iOS用とAndroid用の両方があります。
【Xpression(iOSのみ対応)】簡単で安全に使える!
「Xpression」は、Androidのスマホには対応していませんが、フェイク動画をiPhoneで作ることができるアプリです。また、日本のベンチャー企業である「EmbodyMe」が開発したサービスのため、安心してダウロードして利用することができます。
PCツールのように、顔を入れ替えた動画を作成することはできませんが、表情や口元の動きを入れ替えることができるサービスです。
「Xpression」は、「EmbodyMe」の技術力の高さをアピールするために作成されたとされており、技術的には顔の入れ替えも可能です。
しかし、フェイク動画は悪用される危険性が高いため、顔の入れ替えは行わないアプリとされています。
【Doublicat(Android、iOSどちらも対応)】Androidスマホにも対応!
「Doublicat」は、iphoneだけでなく、Androidスマホでも使うことができるアプリです。選択した顔に、著名人等の顔をはめ込みGIF動画を作れます。
無料利用も可能ですが、オリジナルのGIF動画を作成したい場合や、無料で利用する際にアプリに表示される広告を表示したくない場合は、有料プランに課金することで解決できます。
また、アプリのインストール後に、英語表記で有料プランへの加入を勧める画面が出ますので、無料で使いたい場合は誤って有料プランを申し込まないよう注意が必要です。
「Doublicat」は、アプリ上に記載される言語は英語になっているため、慣れるまでは使いにくいと感じるかもしれませんが、サービス自体は安全に利用でき、使い方も慣れれば比較的難しくなく、無料でいつでも手軽にフェイク動画の作成を楽しめるアプリです。
【Face Swap】Tik Tokの開発元が密かにした?本格的に作りたい人向けツール
「Face Swap」は、デープラーニング機能を使って、2つの顔の画像を入れ替えることができるサービスです。このツールでは動画を作成することは出来ず、あくまで静止画のフェイク画像のみの作成が可能となっています。
しかし、以下の手順を踏むことで、顔を入れ替えたフェイク動画を作成することが可能です。
- 「ffmpeg」という無料ツールを使い、動画から静止画を切り取る
- 「Face Swap」を利用して静止画の顔を入れ替える
- 「ffmpeg」で切り取った静止画を結合する
「Face Swap」は本格的なディープフェイクを作成したい人向けに作られたツールのため、利用者にはプログラミングの技術が必要です。また、仮想環境の作成からセットアップなどの作業も必要になるため、必要なツールのインストールを行わなくてはいけません。
ディープフェイクを簡単に作ることができるツールではなく、本格的な開発者向けのツールとなっています。
ディープフェイクは見抜ける?
ディープフェイクの技術は常に進化しています。
現段階では、「どこか不自然」で「よく見ればおかしい」と分かるものがほとんどです。
しかし、技術が進化するにつれて、徐々に見抜くのが難しくなっています。
ディープフェイクを見抜くポイント
ディープフェイクは、第一印象で違和感を覚えるものが多いです。
意識して見抜くには、以下のような点に注目するとよいでしょう。
- 目の動きや瞬きが不自然
- 顔の輪郭がぼやけている
- 顔と背景の照明が不自然
- 音声と唇の動きが一致していない
- 動きが不自然、ぎこちない
- 顔の部分だけ画質が異なる
これらがディープフェイクを見抜くためのポイントです。
「見抜けないフェイク」が登場する可能性
今はまだ「よく見ればおかしい」というレベルのフェイク動画が多いです。
しかし、AIによる合成技術は日々進化しており、近い将来は「見抜けないフェイク動画」が大量に発生する可能性は高いと思われます。
そのときには「(いかに本物に見えても)この動画はフェイクかもしれない」という前提で見ることが、フェイクに踊らされないための大切な基本姿勢となるでしょう。
ディープフェイクを作成するリスク
フェイク動画の作成には、さまざまなリスクがあります。
専門的な知識がなくても簡単に高品質なディープフェイクを作成できるツールも出ていますが、使用には注意が必要です。
本物と見紛うほどの偽動画を作成したり拡散することは、プライバシーの侵害など法的に問題になることもあるので、注意しましょう。
ディープフェイクの作成や拡散が抵触する可能性のある法律
ディープフェイクを作成したり拡散したりするこは、数多くの法律に抵触する可能性があります。
- 名誉毀損
- 著作権の侵害
- プライバシーの侵害
- 詐欺罪
- 選挙干渉
- 営業妨害、偽証、セクハラなど
フェイクを作成した方は冗談半分だったとしても、それによって傷ついたり不利益を被る人がいることは、常に覚えておく必要があるでしょう。
フェイクニュース
ディープフェイクは、偽情報やプロパガンダを拡散する目的でも利用可能です。
扱う人物やテーマによっては、社会に重大な悪影響を与えてしまう可能性があることを認識する必要があります。
政治家や有名人が実際には言っていないことを言っているかのような映像を作成し、多くの人を騙すことも可能です。
ディープフェイク技術を使って著名人や政治家のなりすましを行う問題は、深刻な社会的影響を及ぼす危険性があります。
詐欺行為全般
ディープフェイクは詐欺にも使われる可能性があります。人工知能で生成した偽映像や偽音声を使用して、個人や組織をだましたり、金銭や情報を奪う行為です。
たとえば自分の会社の社長の声や画像で命令を受けたように思わせ、重大な機密情報をもらしてしまう、などが考えられます。実在の人物の信頼を利用して欺く方法で、、特に企業のセキュリティや個人のプライバシーにとって大きな脅威といえるでしょう。
フェイク動画等に騙されないために、SNSなどにアップされている画像や動画を鵜呑みにしないことが大切です。
知らなかったからと言って拡散することで犯罪に加担してしまい、拡散した人も罪に問われる可能性も十分にあります。
ディープフェイクの犯罪事例
フェイク動画で最も多いのが「フェイクポルノ」と呼ばれる、アダルト画像や動画です。既存のアダルト動画などに出演している女優さんの顔を有名人の顔と入れ替えたもので、海外だけではなく、日本の女優さんも被害に遭っています。
さらに、フェイクポルノ動画が簡単に作成できることで、有名人だけでなく、一般人もその被害に遭う可能性があります。
脅迫やリベンジポルノに使用されることも考えられるほか、動画や画像のみならず、実際に音声の合成技術によってフェイクボイスが犯罪に利用されるなどです。
有名な犯罪事例では、海外の有名人であるテイラー・スウィフトなどの性行為をディープフェイクで作成した動画がRedditに投稿されたことが有名です。
FBIは在宅でリモートで働く人が、ディープフェイクを利用していたという深刻が増加していると警告を出しています。また、イギリスでは2019年にある企業の重役の人の声になりすまし、ディープフェイクを利用して企業に入り込むといった事例が発生しています。
ネット上で話題になったディープフェイク動画
よくできたディープフェイク動画は、SNSでも頻繁に話題に登るようになりました。
以前にYouTubeやTwitterなどで話題になった動画を紹介します。どれも有名人の顔や声を合成して作成された動画や音声です。
これらのコンテンツの多くは、冗談や面白さを目的で作られており、実害はないものがほとんどです。
しかし、人物やテーマによっては冗談では済まされないケースが出てきます。
YouTubeで話題になったディープフェイク動画
実際にYouTubeにアップロードされているフェイク動画をご紹介します。
顔が綺麗にはまって馴染んでいるため、違和感がなく作られています。YouTubeでは、このようなフェイク動画を多数見ることができます。
こちらはディープフェイク作成ツールの紹介動画です。
Twitterで話題の「おしゃべりひろゆきメーカー voiced by CoeFont」
2022年9月5日に公開された「おしゃべりひろゆきメーカー」という音声の合成サービスが話題になっています。
匿名掲示板の「2ちゃんねる」を開設し、YouTubeでも有名なひろゆき(西村博之)さんの声をAIが再現する機能で、利用者が入力した文章をひろゆきさんの声で読み上げてくれます。
また、ひろゆきさんの過去の配信動画などの音声をAIに学習させて、140文字以内の文章をひろゆきさんの写真を切り貼りした簡易的な動画とセットで出力することが可能です。
人気のひろゆきさんに自分の考えた文章を読み上げてもらうことができるため、Twitterでは大喜利のように楽しむ人も多く、大きな話題となりました。
Xでディープフェイクが流行?
X(旧Twitter)でもディープフェイクで作成された動画や画像が投稿されています。
その多くが「フェイクポルノ」つまり、女優やアイドルの顔をアダルト動画に合成したようなフェイク動画を投稿するアカウントです。
投稿されているフェイク画像や動画はとても巧妙に作成されていて、中には数万人のフォロワーがいるアカウントもあります。
また、ディープフェイクによる被害は、画像や動画が簡単に手に入る有名人だけではありません。SNSに自分の写真や動画をアップしている人でも、無断で悪用されてしまう危険性があります。
ディープフェイクの作成が手軽で簡単にできてしまうことから、誰もがディープフェイクを使った被害者になる可能性があることを認識し、悪用されないためにもSNSの投稿にも注意する必要があリます。
まとめ
この記事の内容をまとめます。
- ディープフェイク(Deep-Fake)はAIの深層学習を応用した画像生成や合成の技術
- 顔の入れ替え(フェイス・スワップ)がよく知られている手法
- リップシンク(唇の動きを合わせる)などの技術もある
- 現実にはその人物が言っていないことでも、勝手に作成できてしまう
- PCやスマホで作成できるツールも登場
- だんだん見抜くのが難しくなっている
- 作った方は冗談でも、名誉毀損などの罪に問われる可能性がある
ディープフェイクの技術は今でも日々進化しています。
今はまだ「よく見れば顔を身体のバランスがおかしい」など偽物と気付けるものが多いですが、中には言われても分からないレベルのフェイク動画も存在します。
冗談や面白さ目的としたものならいいですが、政治的なプロバガンダや詐欺に使われる危険性あります。それらの問題を理解してディープフェイクの動画を作成しましょう。