寝ながらイヤホンをしてベッドに寝転がり、音楽を聴いたりゲームを楽しんだりするのは快適なものです。
しかし寝ながらイヤホンをしていたために、感電などで死亡に至った実例があります。
そこで寝ながらイヤホン、略して「寝ホン」での死亡の実例と、その他にある耳への危険性について理解しておきましょう。
寝ながらイヤホンに適したタイプのイヤホンや、寝ホンで耳が痛い時の対処法なども併せて紹介します。
目次
寝ながらイヤホンの危険性
夜に寝ながらイヤホンをつけたままで、ゲームや音楽を聴いていて寝落ちした、という経験の方も多いことと思われます。
しかし寝ながらイヤホンには、最悪の場合には死亡に至るような、さまざま危険性も潜んでいるのです。
以下から、寝ながらイヤホンにまつわる耳の病気や難聴の危険性、そして感電による実際の死亡例などについて解説します。
外耳炎の危険性
イヤホンを耳に付けたままの状態で寝てしまった場合、耳を下にして寝込んでしまったり、寝返りをうった際の寝相などから耳を圧迫してしまうことがあります。
それにより、イヤホンが外耳内壁を傷つけたり、その傷から細菌が混入して炎症を起こしてしまう可能性はかなり高いのです。
これにより外耳炎にかかってしまうと、入浴時の洗髪の際など傷口に触れてしまうなどなかなか治りにくい場合があり、耳の聞こえが悪くなることにもつながりやすくなります。
外耳道真菌症の危険性
あるいはつけたままのイヤホンが、外耳道の湿気につながり、耳の内部に「カビ」の一種が発生してしまうこともあります。
不衛生な耳かきなどで耳掃除をし過ぎた結果などにも発症することのある、「外耳道真菌症」まで進行することも、珍しくないと言えます。
耳は脳に近い位置関係にあることから、こうした病気によっても、死亡に至る病気の危険性があるのです。
寝ながらイヤホンから、外耳炎や外耳道真菌症を発症した場合、自然治癒できるかどうかは微妙ですので耳鼻科を受診することをおすすめします。
難聴の危険性
寝ながらイヤホンの習慣は外耳など耳を傷つけるだけでなく、その音量による鼓膜などへの継続的な刺激から、難聴の危険性があります。
寝ながらイヤホンをした状態では、イヤホンからは音が出しっぱなしで、寝ていても耳は大音量にさらされ続けます。
長時間音を聞き続けていることは、難聴の原因のひとつとして、医療の世界でも近年その危険性が多く指摘されているのです。
イヤホン難聴(ヘッドホン難聴・ロック難聴)とは
ヘッドホンやイヤホンで長時間、大きな音量で音楽などを聴き続けることで発症するのが「イヤホン難聴」(ヘッドホン難聴・ロック難聴)です。
正式な名称は「騒音性聴器障害」というもので、WHO(世界保健機関)も警鐘を鳴らしています。
携帯で利用できる音楽プレーヤーやスマホが普及することに伴い、イヤホン難聴も急増しています
イヤホンやヘッドホンで起こる難聴の症状とは
- 耳鳴り
キーン、ブーっといった音が聞こえ、数十秒の一過性のものから長時間持続することもあります。 - 耳が詰まったような感覚
耳が詰まったような違和感を専門用語で「耳閉塞感」といいますが、エレベーターに乗ったときや飛行機に乗った時のように、すぐに治れば問題ありません。
長く続く場合はイヤホン難聴の可能性があります。 - 高音が聞き取りにくい
イヤホン難聴は4,000Hz(ヘルツ)くらいの高音域の音が聞き取りにくいといった症状から聴力低下が始まるといわれています。
健康診断の聴力検査で発覚したという報告もあるようです。
イヤホン難聴にならないためにできること
WHOでは、イヤホン難聴のリスクについて以下のように警告しています。
- 子どもの場合 75dbの音量で1週間あたり40時間以上聞き続ける
- 大人の場合 80dbの音量で1週間あたり40時間以上聞き続ける
ただし個人差もありますので、イヤホンで音楽を聴く際には、長時間連続しない、また途中でイヤホンを外し、耳を休める時間を作ることが必要です。
難聴チェックリスト
以下に当てはまる数が多いほど、イヤホン難聴リスクが高まります。
- 話しかけられても気づかないくらいの音量でイヤホンを使い音楽を聴いている
- ヘッドホンなどを利用した後に耳鳴りになることがある
- 2日1時間以上連続でイヤホンやヘッドホンを利用している
- 周囲の人にテレビの音が大きいといわれる
- 耳が詰まったような感覚がある
- 人の話を何度も聞き返す
- 人の話を聞き間違える
- 話し声が大きいといわれる
音響障害の危険性
人間の耳の中には、蝸牛(かぎゅう)という器官があり、そのなかに有毛細胞というものが生えています。
有毛細胞は脳に音を伝える役目をしていて、長時間に渡って一定以上の音量を聞き続けていると、この有毛細胞が徐々に破壊されていきます。
有毛細胞は再生できない器官ですから、この状態が「音響外傷」へと進行し、そのまま難聴の原因となることがあるのです。
世界保健機関(WHO)による耳を守るためのガイドライン
WHOという略号でおなじみの「世界保健機関」では、難聴に関しても、それを回避するための基準(ガイドライン)を設けています。
まず、継続して聞き続ける音圧に関しては、70デシベル以上はできるだけ避けることが第一に定められています。
そして音圧レベルに応じてでは、1日当たりに聞いてもよい時間の長さの基準も、一定の制限を示しているのです。
寝ながらイヤホンで感電死?その実例とは
寝ながらイヤホンのリスクは、外耳炎など耳の病気や難聴など耳の働きの悪影響だけでなく、意外にも「感電」によって死亡するという恐ろしいリスクも報告されています。
ゲームや音楽などで寝ながらイヤホンは楽しいものですが、寝ながらイヤホンのまま寝落ちしたために、死亡に至った事例は現実にいくつかあるのです。
以下は、寝ながらイヤホンをしていたために、何らかの原因により感電し、死に至ったという事例です。
16歳少年が寝ながらイヤホンで感電死?
2018年12月のことですが、マレーシアで16歳の少年が、充電中のスマホに接続したイヤホンを付けたままの状態で死亡していたという事故が発生しました。
少年の死因はイヤホンをしたまま寝てしまった「感電死」が死亡原因といわれています。
母親が朝少年を起こしたところすでに死亡していたらしく、発見時には少年の左耳にはやけどと外傷性出血が見られたそうです。
そしてそれ以外の外傷もなく、後の検死結果でも、感電のショックが死因であると特定されました。
スマホ充電中は内部には高い電圧が流れており、イヤホンやケーブルの破損などがあると、それをきっかけにイヤホンから電流が漏れて感電して死亡に至ることもあり得るのです。
25歳ゲーマーが寝ながらイヤホンで感電死?
2019年9月にはタイで25歳の男性が、布団の中で感電して死亡しているのが発見されました。
この青年は夜間にオンラインゲームを行うことが習慣で、寝ながらイヤホンのまま寝落ちすることも、たびたびあったといわれています。
遺体として発見された際、電源コードにはゲーム機や充電中のスマホ数台が接続されており、その1台のスマホに接続されたイヤホンを耳にしていました。
寝ながらイヤホンが原因ではない感電死の報告も!
そして電源プラグのそばの左手には、紫色の変色や赤いやけどのような跡がありました。
この男性の場合は、寝ながらイヤホンが感電による死亡の直接的な原因ではなく、プラグに触れた左手から感電して死亡したとの分析があります。
いずれの2件に関しても、充電中のスマホに接続したイヤホンで、寝ながらイヤホンをしていたことから感電による死亡事故が誘発されたと考えていいでしょう。
寝ながらイヤホンで耳が痛いのは耳の外傷?
寝ながらイヤホンをしていて、耳が痛いと感じた場合には、すぐにイヤホンを外しましょう。
耳が痛い原因としては、炎の傾向が見られるか、イヤホンの圧着具合が強い状態になっていることが考えられます。
以下に、寝ながらイヤホンで耳が痛くなる原因と対処法について、イヤホンの使用の注意点を述べます。
外耳炎や難聴にならないためには?
寝ながらイヤホンが原因で、外耳炎や難聴などが予想される場合は、すぐに耳鼻科を受診して治療を受けることが先決です。
寝ながらイヤホンが原因とはっきりしているのなら、当面使用は控えます。
しかしどうしても寝ながらイヤホンをしたい場合には、医師の指導の下で最低限下記のような対策を講じましょう。
- イヤホンの音量を小さくする
- タイマーを設定する
大音量で音楽を聴くことで、耳に大きな負担となります。
また、長時間イヤホンを付けて音楽を聴くことも、難聴の大きな原因となるのです。
タイマーを設定し時間になったらイヤホンを外し、音楽を聴いていた3倍くらいの時間、耳をしっかり休ませましょう。
耳に負担が大きいイヤホンの使用を控えよう
昼間にイヤホンを装着しているときは、特に痛いと感じなかったけれど、長い時間、寝ながら装着していたら痛みが出てきたということもあります。
寝ながらイヤホンでは、横向きに寝たり寝がえりをうったりなどで、イヤホンに圧がかかり起きている時以上に耳を圧迫するのです。
イヤホンで耳が痛くなる場合は、できる限り柔らかい素材のものなどを選ぶのがよいでしょう。
また詳しくは以下でも説明しますが、「寝ホン」と呼ばれるような、寝ながらイヤホンに向いた機種を選ぶこともおすすめです。
寝ながらイヤホンには「寝ホン」がオススメ!
イヤホンには「寝ホン」と呼ばれるタイプのものがあり、寝た状態で装着していても痛いと感じることなく、違和感が少ないタイプがあります。
耳へ直接は触れない「骨伝導」方式などは、外耳内のカビや鼓膜への過度の負荷などを軽減できる効果が期待できるタイプの機種もあります。
またイヤホンの接続がワイヤレスタイプを選ぶことで、寝がえりなどの際に気にならず、睡眠のジャマにもなりにくいでしょう。
「骨伝導」なら耳そのものへの負担は激減する!
骨伝導方式イヤホンとは、こめかみ付近に音伝動端子を触れさせ、顔面の骨を震わせて音を聞かせる技術のイヤホンです。
骨伝導イヤホンはメリットが多くあり、そのどれもが耳に優しい仕様になっています。
- 耳の穴を全く塞がない(外耳道には触れない)
- 音量を適度に大きくしても鼓膜(蝸牛や有毛細胞)に負担をかけ過ぎない
- そのものからの「音漏れ」はほとんどない
反面、害音を遮ることがないので騒音対策にならないことや、製品がまだ高価なものが多いなど、デメリットもあります。
「寝ホン」使用での注意点は
「寝ホン」でそのまま寝落ちするというやり方は、そもそも耳には決して「優しい」行為ではありません。
「寝ホン」の醍醐味だけを追究すると、やはり耳の痛みや病気・難聴などのリスクが増大しますし、感電死してしまう危険性については装着の仕方が大きく関わります。
まず耳を圧迫し過ぎないこと、音量・音圧は適度に抑えること、そしてイヤホン接続の取り回しが快適になるよう心がけてください。
寝ながらイヤホン「寝ホン」の選び方
寝ながらイヤホンにぴったりの、「寝ホン」を選ぶ際のポイントを紹介します。
寝ホンといっても、形状や装着方式などはさまざまなものがあります。
自分に合ったものを選びましょう。
耳栓型のカナル方式か?耳介にかけるインナーイヤー方式か?
イヤホンは大まかに耳栓型のカナル方式と、耳の穴の入り口の耳介に引っ掛けるインナーイヤー方式に分かれます。
前述した「骨伝導」は全く新しい方式であり、まだ価格的に高価なものが多く、選択しにくいためこの2タイプで見てみましょう。
インナーイヤー方式は耳から外れやすいことと、外部の雑音を遮蔽しにくいことから、選ぶとなるとカナル型の方が無難といえそうです。
ただしカナル方式は耳の穴に完全に挿入され、耳に密着して外耳道を塞ぎますから、痛いと感じないものを選ぶことが重要です。
有線か?ワイヤレス接続方式か?
イヤホンには、有線タイプのものとワイヤレスタイプのものがあります。
寝ホンでは、寝がえりなどを打っても体に絡む心配のないワイヤレスタイプのものが向いています。
ただし、ワイヤレスタイプのものは充電が必要なので、使ったら充電が必要です。
耳に直接触れるイヤホンの「ハウジング」の素材やサイズ
イヤホンの周囲を保護する部分をハウジングと呼びますが、寝ホンには、ハウジング部分のサイズが小さいタイプが向いています。
横向きに寝て、耳を下にするなどで圧迫した際に耳への負担が大きくならないようにするためです。
またその素材についても、柔らかく、通気性に優れたものが好ましいといえます。
寝ホンでも痛い時の対処法
寝ながらイヤホンとして寝ホンを選んだとしても、耳に装着するものなので、どうしても耳が痛いと感じることがあります。
その場合、耳に装着しないタイプのイヤホンを選びましょう。
代表例として、ピロースピーカー、アイマスク型スピーカー、照明一体型スピーカーを紹介します。
ピロースピーカー
ピロースピーカーは、名前のとおり、枕に装着して使用するタイプのスピーカーです。
耳元で使うため、その音量は小さめに設計されています。
スマホやMP3プレーヤーなどに接続して使用するため、電池・ACアダプター・電源ケーブルは不要な製品が多いです。
枕の下に入れるタイプと、枕に内蔵された枕一体型のものがあります。
アイマスク型スピーカー
アイマスクの耳部分にスピーカがセットされており、アイマスクを装着するだけで、音楽なども聴けるというものです。
見た目には、普通のアイマスクとあまり変わりはありません。
横向きに寝ても耳への圧迫感がなく快適ですが、音質についてはあまり期待しない方がいいでしょう。
照明一体型スピーカー
照明にスピーカーがセットされた、照明一体型スピーカーもあります。
天井などの照明に、スピーカーをセットしたシーリングライトスピーカー、枕元に置くベッドライトスピーカー、おしゃれなランタンとセットになったランタンスピーカーなど、さまざまなタイプの商品があります。
まとめ
寝ながらイヤホンは死亡に至る事故を招く危険性があり、痛みが出ることもあり、また外耳炎や難聴の原因になる可能性もあることを説明しました。
寝ながらイヤホンを楽しみたいのであれば、本記事で紹介したような、「寝ながら」に適した「寝ホン」を選ぶようにしてください。
また「寝ホン」はその使い方にも十分に注意して、感電や耳を圧迫によるリスクが最小限になるように利用しましょう。