保険証の色が水色だとやばいという説がありますが、なぜそう言われるのか理由を探ってみました。
健康保険証は勤続先の健保組合や自営業者の人などでいくつかの種類に分類され、それらの色は特定の決まりがなくバラバラです。
保険証の色で企業のランク付けや収入の多さなどが判別できるのか検証し、保険証の色が水色だとやばいという風評がデマであることを示します。
また保険証に記載されている記号や番号にはどんな意味があるのか、保険証を切り替えるべきタイミングなどについて紹介していきましょう。
目次
保険証が水色だとやばい?
(画像引用:全国健康保険協会公式サイト)
健康保険証、いわゆる「健保」の証書にはいくつかの種類があり、それらの「色」は特別な決まりがなくバラバラです。
その中で「水色」の保険証はやばいといわれることがあるようですが、なぜ水色がやばいと揶揄・差別されることがあるのでしょうか。
保険証が水色だとやばいというのは、実際には風評に過ぎないものであり、水色の保険証にも多くの種別が存在します。
やばいと揶揄される理由としては、水色の保険証の世帯は職業や年収が底辺レベルにあるという、間違った認識から派生しているのです。
保険証は通院などで他人の目にさらされる機会が多いので、その色別で世帯の貧富の差がわかるという、ある種の都市伝説的な誤解から生じていると言えます。
健康保険証の色の違いが職業や年収などを指すことはない!
結論から言いますと、保険証が水色だとやばいということは、全く根拠のないデマだと言い切れます。
後述しますが、同じ水色の保険証でも「協会けんぽ」と「共済組合」、どちらも存在するのです。
本記事では、保険証の種類による色の違いがどのような意味を持つのか、その中で水色だからやばいのかどうかを解説していきます。
保険証が水色だとやばいというのはただの「風評」
保険証の色は、実際には特別な法則で決まるということは皆無であり、被保険者の職業や収入ランクなどを示すものでないことを解説していきましょう。
そして保険証は転居や加齢など、その人のライフステージによっても異なる色の保険証になることがある点を紹介します。
運転免許証ではその色だけで、優良ドライバーかどうかを直接指し示しますが、保険証にはそのような機能も性格もないのです。
①保険証の色には特別な決まりはない
保険証が水色だとやばいということが、誤解である第一の理由として、保険証の色には特別決まりが一切ないという点が挙げられます。
保険証の色別で、持ち主の年収や職業がバレるというようなことは一切ありません。
保険証は多くの種別に派生してきており、そのそれぞれの団体が個々に色を決めています。
水色の保険証だとやばいという指摘は、色には格別な意味が伴わないという点からも、不合理な風評に過ぎないと言えるでしょう。
②世帯主の勤務先が変わると保険証の色が変わることも
また自分の世帯主の勤務先が変わることで、家族全員の保険証の色が、それまでと全く違う色に変わることはごく普通にあることです。
基本的に保険証は「世帯」に対して交付されるものであり、その団体が異なる対象に変われば、種類も色も変わります。
保険証の色だけのことで言うならば、世帯主の年収がアップして水色に変わることもあれば、逆に年収ダウンで水色以外になる例もあることでしょう。
個人レベルで言えば上述の通り、保険証の色は世帯主の加入する保険団体で変化しますから、単純に水色がやばいという指摘は全く的外れであることがわかります。
③転居や年齢などから保険証の色が変わることも
また転居で市区町村が変わる場合に、国民健康保険の適用者は、保険証の色が変わることがよくあります。
高年齢になり「後期高齢者医療保険」へと移行する場合にも、それまでの保険証とは違う色になるケースが出てくるでしょう。
まとめますと、下記のような要因によって保険証の種類と色が変わることがあるのです。
- 転居などにより住民票(市町村)が変わった場合
- 健康保険から年齢満了によって「後期高齢者医療保険」へと切り替わる場合
- 何かの理由で保険を切り替えた場合
つまり保険証の「色だけ」では、その持ち主に対しての、何かの判断材料にはならないことがわかります。
保険証が水色だとやばいというのは、単なる風評に他ならない論拠であると言えるでしょう。
保険証の種別による色の違いは様々
保険証とはそもそも、日本国民ならば原則全員が加入できる、「医療健康保険証」のことです。
その保険証は種類が非常に多く存在し、これは医療費の公的負担をする団体によって色も変わってきます。
上述したように、保険証の色には何かの法則や決まりがありませんし、ライフステージの変化で加入する保険が変わることもしばしばです。
その中で保険証が水色だとやばいという説がなぜ流布したのか、保険の種類とそれらの色を明らかにすることで、推理してみましょう。
保険証とは「公的医療保険」に加入している証明書
保険証とは「公的医療保険」のどれかに、何らかの形で加入していることを表す証明書のことを指します。
医療機関で保険証を提示することによって、日本全国のどこでも定められた同率の費用負担で、保険適用内の医療行為を受診できるのです。
この場合に受診者つまり被保険者は、医療機関の窓口では自己負担額だけを支払えば良いと定められています。
医療機関はその自己負担を超えた医療費を、審査支払機関へ請求し、後日徴収するサイクルが基本です。
保険証の種類①社会保険
ではここから保険証の種類について、順に説明していきましょう。
まず1つ目としまして、一般的に「社保」と言われる社会保険について紹介します。
社会保険では被保険者が一般企業の勤務者の場合、公務員の場合など、その職業で保険証の色が違うことがほとんどです。
そしてその保険者が養う「扶養家族」は、それに準じて社会保険への加入が可能となっています。
組合健保「赤・ピンク」
色が「赤・ピンク」の保険証として、「組合健保」があります。
これは主として大企業へ勤務する会社員、そしてその扶養家族が加入することができる健康保険です。
「組合健保」の成立基準としては、700名以上の従業員の企業による組合または、合計3000名以上で同業他社で共同設立した健康保険組合の2通りがあります
この「組合健保」の保険証の色が「赤・ピンク」であることから、他の色の保険証に対してマウントを取る格差意識から、「水色の保険証はやばい」という認識へと発展したとの説もあるようです。
協会けんぽ「青・水色・オレンジなど」
そして「水色の保険証はやばい」という、本記事のメインテーマの根源と考えられる「協会けんぽ」について触れてみましょう。
「協会けんぽ」は、主として中小企業に勤続する社員と、その扶養家族が加入することができる健康保険です。
「協会けんぽ」に加盟する総人数は、約4000万人を超えて今も増加中と言われ、所有される保険証としては最大と言えるでしょう。
この「協会けんぽ」の保険証の色は、青・水色・オレンジであり、水色が最も多いと推測されています。
「協会けんぽ」は元々は政府が運営していましたが、平成20年に民営化されました。
民営化以前発行の保険証は「オレンジ」だったために、勤続年数が長い人はオレンジの保険証を所有していることが多いようです。
このため同じ「協会けんぽ」同士でも、社歴が浅いまたは年数が短いはずの、水色の保険証は格下なのでやばいと揶揄されたのかもしれません。
共済組合「黄色・水色」
保険証の色が「黄色・水色」である、「共済組合」も分類上は、社会保険です。
「共済組合」は公務員として勤務する方、または私立学校へ勤続する教職員が加入することができる健康保険となっています。
「共済組合」での保険は、厳密に言うと保険証ではなく「組合員証」と呼ばれる色が黄色のものです。
「共済組合」は次に示す、3種類に分類されます。
- 国家公務員共済組合
- 地方公務員共済組合
- 私立学校教職員共済
その名称の通りに、黄色の保険証イコール「公職の人」、というイメージで定着しているようです。
これと比較して、中小企業は水色の保険証だからやばい、という格差の比較が出たのかもしれません。
ただし「共済組合」でも、水色の保険証が存在するので、単なる風評であることを示していると言えるでしょう。
保険証の種類②国民健康保険
2つめの大分類としては、一般的に「国保」と呼ばれる、国民健康保険についてその種別を紹介していきます。
国民健康保険には自営業者、年金生活者、非正規雇用者、そしてその家族が加入することができる健康保険です。
国民健康保険における保険者は、自治体または特定の組合です。
この国民健康保険では、「市町村国保」と「国保組合」それぞれに分類されます。
市町村国保「赤・ピンク・緑・灰色・紫など」
「市町村国保」とは居住者の保険加入者、または国保組合の加入者以外の人が加入することができる健康保険です。
運営の主体は、その市町村と都道府県となります。
保険証の色については、あまり統一がなく、様々な色の保険証が見られるようです。
国保には水色が入りませんので、そこからの差別化によって、やばいと線引きされた可能性もあります。
国保組合「ピンク・黄緑など」
「国保組合」は、一般的に自営業者が加入できる健康保険と考えていいでしょう。
原則としては個人事業所を対象として、同種類の事業へ従事する人と、その家族が加入することができます。
また、クリニックの開業医など自由業者の加入できる「医師国保」や、土木建築従事者が加入することができる「全国土木建築国保」などが存在します。
保険証の種類③後期高齢者医療制度「緑・紫・青など」
日本では75歳になった時点で、それまでに被扶養者でいた方も含め全ての人が公的医療保険から、「後期高齢者医療制度」へと移行することが定められています。
後期高齢者医療制度とは、都道府県単位に設立された、広域連合によって運営される公的医療保険です。
また例外的に75歳未満でも、65歳以上で寝たきりであるなど一定レベルの障害が認定される場合には、任意で後期高齢者医療制度へ移行することが認められています。
保険証に記載されている記号や番号の意味は?
各種保険証には、一般人が見てもわからないような数字や記号が記載されています。
それらについての意味がどんなものであるのか、探っていきましょう。
色だと水色はやばいなどと保険証で差別誤解が生じるように、記載された記号や数字でも、何かやばいことなどは見つかるでしょうか。
記号
記号は企業または自治体などの「保険者」を示しており、「事業所整理記号」という言い方もされています。
社会保険の場合には、記号は企業や団体ごとで異なるものが使われることがあるようです。
国民健康保険の場合には、その市町村、自治体ごとに異なります。
保険者番号
保険者番号は、社会保険の場合には「8桁」の番号で、国民健康保険の場合は「6桁」の番号で表記されています。
ここでは社会保険での、頭「2桁」分の数字での分類ついて、その示す内容に着目してみましょう。
- 01 全国健康保険協会(協会けんぽ):中小企業の従業員
- 02 船員保険:船員
- 06 組合管掌健康保険:大企業の従業員
- 31 国家公務員共済組合:国家公務員
- 32 地方公務員共済組合:地方公務員
- 33 警察共済組合:警察職員
- 34 公立学校共済組合/日本私立学校振興・共済事業団:教職員
- 39 後期高齢者医療制度:後期高齢者
この頭「2桁」の部分を、法別番号と言い、勤務先の大別を知ることが可能です。
このような情報が保険者番号に含まれるということは、水色の保険証がやばいという風評以上に、職業が特定できてしまう点で個人情報上の問題があるかもしれません。
これについては保険証が「身分証明」で使われるシーンなどで、識別のために活用されることがあるようです。
番号
番号とは、被保険者個人を示す番号のことを指します。
保険者の管轄内での整理番号ですから、複数の被保険者に対して同じ番号が割り振られることもあるようです。
またこの番号は、被保険者ごとに割り振られる番号ですから、扶養家族に対しても被保険者と同じ番号が割り当てられます。
番号が若いと社歴が長い?
社保で割り振られる番号では多くの場合、加入した順番を示す数字になっています。
そのため番号が若い人ほど、その社歴は長いものと推測できるのです。
このように保険証では、色よりも番号・数字の方から、かなりの情報が得られる仕組みとなっていることがわかります。
保険証を切り替えるべきタイミングについて
国民全てが何らかの保険証を所持していますが、保険証が基本「世帯」単位で交付されていることから、切り替えるべきタイミングがあることに注意しましょう。
それは就職・結婚・離婚などによって「世帯」を離れる、または逆に「扶養」に入るなど、自分から気付いて処理すべき内容となります。
そうしたタイミングでは、保険証を切り替えることが必要です。
学生が社会人になり親の扶養から外れる時
通常家庭で子供がまだ学生であるうちは、大学生ですでに成人していても、親を世帯主として「扶養」に入り保険証を所持していることがほとんどです。
子供が社会人としてどこかへ勤続し始める段階で、扶養の要件を満たさなくなるため、就職先の健康保険での保険証へと切り替わります。
このケースでは扶養している親の側で、就業先へ子供が扶養から外れる件を申告する必要があるでしょう。
結婚する時
結婚する場合に最も注意したいことは、配偶者の社会保険で「被扶養者」になるかならないかの選択です。
共働きで夫婦共に給与所得者である間はそれぞれの保険証ですが、育休などを機に夫(配偶者)の扶養に入りますと、保険料を大幅に節約できます。
会社の社会保険から脱退するので「国民健康保険」へ加入するケースもありますが、扶養での社保加入が可能であれば、そちらを優先して検討すべきでしょう。
これら諸手続きについては、多くの場合勤続先での事務部署へ相談し、書面で手続きすることで処理可能です。
離婚する時
上記の逆として離婚の場合には、それまでの「被扶養」から抜けて新規に自分自身で保険加入しないと、無保険状態になってしまう危険性があります。
これら結婚・離婚時には、それぞれ適法な届出を早めに行うことが必要と言えるでしょう。
摘要されない時期に医療行為を受けた場合、後から不足金請求されるケースもあるので気をつけてください。
配偶者の収入が扶養範囲を超えた時(130万円の壁)
また配偶者の収入でよく言われる、「130万円の壁」にも注意が必要です。
これは扶養の要件として、配偶者の年収が130万円を超えた場合には、扶養から抜けないとならないという規定のことを指します。
現行の税法上では、扶養家族として得ても良い金額の上限額が、130万円と定められてからかなりの年数が経過しました。
多くの場合、妻のパート収入などでは、年末に「収入の調整」をしてこの壁を超えないように勤務時間を調整するようです。
年末に労働時間の調整しないと扶養から外れてしまう?
もしもこの130万円の壁を超えてしまって、何もしないで扶養家族として医療機関にかかった場合、あとから不足金徴収されてしまうこともあるので注意が必要です。
パート勤務者も企業にとっては重要な労働力であるので、この上限額に対しては見直しが必要という指摘も多くあります。
まとめ
「保険証が水色だとやばい」という指摘は単なる風評に過ぎず、全く根拠のないデマであることを解説しました。
また保険証の「色」については、特に何かの法則などないことが明らかです。
しかし保険証に記載される数字や記号の中には、その人の職種などを大別できてしまう部分もあり、むしろそちらの方が「やばい」のではないかということにも触れました。
日本の健康保険制度は「国民皆保険制度」とされ、国民全員が保全の対象です。
ライフステージの変化などで、切り替えが必要な場合などには、自分から気付いて届出するなど間違いのないように注意しましょう。