生成 AI は従来のように翻訳や診断以外に、画像・テキスト・音声などのコンテンツを生成することができます。
本記事ではその技術的な仕組みや活用事例、基本的な使い方・代表的な画像生成AIなど解説します。
生成AIとは
生成AIは、Generative AI(ジェネレーティブAI)とも呼ばれていますが、テキスト・音声・動画などのコンテンツを生成します。
AI(人工知能)である生成AIは、データから学習し新たなコンテンツを生成でき、その分野は様々です。
言語・芸術、さらにはプログラム言語といった複雑なデータを学習し、テキストや音声を生成したり、オリジナル動画やプログラミングコードも創り上げます。
近頃はビジネスシーン以外に、日常生活の中でも生成AIの技術が利用されています。
生成AIの仕組み
生成AIはディープラーニング(深層学習)と呼ばれる機械学習を利用し、大量な学習データをもとにAIが最適な回答を導き出します。
この手法により0からいろいろなものを生成することが可能となり、より質の高いコンテンツが造られるようになりました。
これまでは人間が線s寧となって明確な回答をAIに提示し、AIはその回答を元に知識を記憶することで様々な「予測」を行うという仕組みでした。
しかしディープラーニングによる生成ができるようになり、AI自身がオリジナルコンテンツを生成できるのが「生成AI」の仕組みです。
生成AIとAIの違い
生成AIとAIの違いを簡単に説明すると、「オリジナルコンテンツ」を生成できるのが「生成AI」、できないのが「AI」といえます。
- 従来のAI 人から情報を与えられ知識・記憶化し既存コンテンツから最適な回答を導き出す
- 生成AI ディープラーニングでAI自身が学習し新しいオリジナルコンテンツを生成
生成AIは自分で学習し続けることで、人が与えていない情報やデータも記憶し、新たにオリジナルコンテンツを生み出します。
つまり生成AIは、人が知らない情報や知識をインプットし、新たなアウトプットを人に伝えることができるのです。
生成 AI の主な種類と用途
生成AIといっても、さまざまな種類がありますが、「何を生成するの?」に着目して分類すると以下のような4種類に大別されますのモノがあります。
画像生成AI |
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動画生成AI |
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テキスト生成AI |
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音声生成AI |
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生成AIのサービス例
生成AIはいくつかの種類がありますが、下の表に代表的な生成AIサービスをまとめてみました。
種 類 | サービス名 | サービスの特徴 |
テキスト生成AI | ChatGPT (米OpenAI社開発) |
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画像生成AI | Stable Diffusion (英スタートアップ企業 Stability AI開発) |
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動画生成AI | Runway Gen-2 (米ランウェイ社開発) |
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音声生成AI | Amazon Polly (Amazon Web Services) |
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生成 AI の技術的仕組み
ここでは、現在使用されている生成AIの代表的な「技術的」仕組みを紹介します。
トランスフォーマーモデルとその仕組み
トランスフォーマーモデルは、自然言語処理や画像認識など活躍しているディープラーニング(深層学習)モデルです。
その仕組みは、以下のとおりです。
- エンコーダー:入力された文章などのコンテキスト情報をベクトルに変換する仕組み
- デコーダー:翻訳文などの出力シーケンスを生成する仕組み
- セルフアテンションメカニズム:文章中の各単語を他の単語との関連性を考慮して処理する仕組み
- ポジショナエンコーディング:文脈関する情報として、単語の出現順番をベクトルに付与する仕組み
GANs、VAEs のアルゴリズム
GANs(敵対的生成ネットワーク)・VAEs(変分オートエンコーダ)は、いずれもディープラーニングの中で注目されている仕組みの1つです。
VAEsはエンコードとデコードという2ネットワーク構成となっており、エンコーダーで入力情報を圧縮し、デコーダーでエンコーダーの情報をもとに新しい画像を生成します。
GANの仕組みは、ジェネレーター(Generator)とディスクリミネイター(Discriminator)の2ネットワーク構成となっています。
ジェネレーターではデータを生成し、ディスクリミネイターで生成結果を判別する仕組みです。
2つが競い合いながら学習し、最終的に本物に近いデータを生成します。
生成 AI の活用事例と効果
CHATGPTのみならず、生成AIはビジネス分野や研究分野などで急速に実用化が進めています。
様々な活用事例が報告されていますが、代表的な活用事例を紹介します。
ビジネスでの生成 AI 活用法
生成AIが新しく創造性豊かなコンテンツを創りだすことから、ビジネス分野でも注目され、これまでにない新しい活用方法が進められています。
ここでは、マーケティング分野と研究開発分野での活用例を紹介します。
マーケティングでの活用例
マーケティングでは、顧客ニーズを探る市場調査・分析、それらにもとづく商品企画・開発、商品の広告宣伝活動・プロモーション等が必要です。
これまでのAIの仕事は、顧客ニーズの把握など分析を中心に活用されていました。
しかし現代では以下のように、「モノ・サービスの提案」に生成AIが活用されています。
- マイクロソフト
生成AIを活用した「Microsoft Customer Service」によりCHATBOTでの顧客との自然な会話を実現 - Adobe
生成AIを活用した「Adobe Sensei」を開発
AIが顧客にあった文章や画像を自動的に生成することでコンテンツ制作を効率化
研究開発での応用
研究開発分野でもビッグデータを活用し、AIは主に解析や診断などに利用されてきました。
しかし生成AIが登場したことで、こうした解析などにとどまることなく、新たな知見の獲得・新たなモノ・サービスの開発にも活用がスタートしているのです。
例えば創薬分野では、富士通株式会社と国立研究開発法人理化学研究所が、生成AIを活用した共同で研究開発を行っています。
生成AIは膨大な電子顕微鏡画像から、従来より10倍以上の速さでタンパク質の形態と構造変化を推測し、研究開発に役立っています。
企業で生成AIを利用するメリット・デメリット
既にたくさんの企業が生成AIを活用し始めています。
生成AIはビジネスの現場で、作業の効率化や新しいアイデアの発掘など、様々な分野で貢献しているのです。
ただ生成AIを企業が利用する際、デメリットになる点もあります。
生成AIを利用する際のメリット・デメリットを解説します。
企業で生成AIを利用するメリット
企業が生成AIをビジネスの場で利用するメリットは以下のような点です。
- 作業の効率化
これまで人に頼っていた文章や画像のコンテンツ制作の作業時間を大幅に短縮できる - 顧客の満足度の向上
生成AIによって顧客の行動履歴や趣向を分析し総合的にサービスを提案できる - 新しいアイデアの創生
生成AIとの会話によって新しいアイデアの発想につながる可能性がある
業務の効率化以外にも、生成AIからの新しいコンテンツの提案などから、企業は新たなチャレンジに踏み出せると思います。
企業で生成AIを利用するデメリット
企業で生成AIを利用する際のデメリットには以下のようなことが考えられます。
- ディープフェイク生成の可能性
SNSなどでも問題になっているディープフェイクを生成してしまう可能性がある
(フェイクニュースや偽情報となってしまう可能性) - 責任の所在
生成AIが創り出した文章や画像、コンテンツの中に人種・性別に対する差別要素があった場合、責任の所在が不明確になる - 雇用の減少
生成AIがビジネスの分野にどんどん介入してくることで文書作成・画像やコンテンツの作成など、雇用が減少する可能性がある
こうしたデメリットを踏まえ、生成AIをビジネスで健全に利用することを考えましょう。
企業で生成AIを利用する際の注意点
企業で生成AIを健全に利用するためには、いくつかの注意点があります。
生成AIを活用する前に、以下のような注意点をしっかり頭に入れておきましょう。
社内のガイドラインを作成する
生成AIをビジネスの現場に活用する前に、必ず社内での明確なルール・ガイドラインを作りましょう。
生成AIの社内ガイドラインについては、「日本ディープラーニング協会」が企業や組織が生成AIを利用する際に留意すべき点として「生成AIの利用ガイドライン」にまとめています。
このガイドラインを元に、企業の特性や組織の実情に合わせて加筆・修正を行い、社内ルールを作成することをおすすめします。
人の目による検証と精査が必要
テキストの生成AIを利用する場合、創出されたコンテンツについて、必ず人の目による検証と精査が必要です。
AIは様々な情報と学習データに基づき回答を出力しますが、その学習データの中に偏見や誤報があってもそのまま作成されます。
それが結果的に、著作物の無断利用になることもありますし、誤った情報を拡散してしまう可能性もあるのです。
生成AIはあくまでもコンテンツ作成の「ツール」です。
出来上がったものはそのままコンテンツとして利用するのではなく、人の目で確認と精査を行い、判断に責任を持ちましょう。
個人情報・機密情報の入力はNG
生成AIを利用する際、個人情報や機密情報を入力しないようにしましょう。
ユーザーが個人情報を入力したものを生成AIが学習データとして利用すれば、顧客の個人情報を外部に知らせてしまう可能性があります。
顧客データなどが拡散してしまえば、大きな問題となります。
生成AIが学習に利用するデータには、個人を特定するデータや企業の機密など絶対に入力しないよう徹底すべきです。
生成AIを学ぶ方法
これから生成AIの導入を考えている企業や個人の方も多いと思います。
ただ、生成AIを導入するためには知識はもちろん、ツールなども必要です。
ここでは、生成AIに関して学ぶ方法を紹介します。
オンラインコースと教育プログラム
有料ですが、きちんと生成AIを学びたいのであれば、有料ですが海外のオンラインコースがおすすめです。
代表的なサイトとしては、Udemy・Coursera・edXなどがあり、無料で生成AI概要を学べるコースも設置されています。
生成AIを学ぶために必要なツール
実際に生成AIを業務などに導入することにトライしてみたい場合は、生成AI用ツールやソフトウェアが必要となります。
ツールには、以下で紹介する画像生成AIのような特定目的向けのツールのほか、GoolgleCloud・AmazonのAWS・MicroSoftのAzureなどのプラットフォームにも生成AI開発環境が用意されており、それを利用することで本格的なアプリケーションの開発が可能です。
おすすめの画像生成AI
次に、おすすめの画像生成AIをいくつか紹介します。
Stable Diffusion
Stable Diffusion-3は2022年に登場した最新の画像生成AIツールで、従来の画像生成AIと比べてよりリアル・高解像度・高品質の画像を生成できるのが特徴です。
画像生成の質が高く、たくさんのユーザーが利用している人気のツールです。
また、プロンプトにより複雑な文章を入力でき、作成したい画像を正確に記述可能のため、医療分野の画像生成技術への活用などにも期待されています。
制限はありますがAPI経由で無料でアプリから利用できるので、さまざまなアプリでも利用されています。
DALL·E 2
DALL·E 2は、ChatGPTを開発したOpenAIの画像生成AIで、入力した文章に柔軟に対応して画像を生成するところが特徴です。
高度なAI技術を活かし、4倍高解像度の画像生成が可能です。
ビジネスシーンではWebデザインのほか、広告デザインのイメージ画像作成など、クリエイティブな業務に利用されています。
またアニメ風画像を作るアーティストからも評価が高いツールです。
Midjourney
Midjourneyはテキストで指示をすれば画像を生成できる画像生成AIです。
誰でも手軽に使えて、美術コンテストで優勝するほどの人間の作品と遜色ない画像を生成することで評判となりました。
チャットツール「Discord」のBotコマンドを利用し、手軽に高品質・高精度な画像を自動生成します。
無料版は2023年3月末で廃止となっており、有料プランへの加入が必要です。
(有料プランを利用して生成した画像は「商用利用可能」)
なお、利用するにはDiscordにアカウント作成が必要となっています。
Adobe Firefly
Adobe Fireflyは、Adobeの画像生成AIです。
Adobeが開発した「ジェネレーティブAI」を使い画像を生成します。
現在はベータ版がリリースされており、テキストから画像・文字エフェクトを生成したり、画像の色調変更などが利用可能です。
著作者が許諾しているデータのみ学習に利用することや、100以上の言語に対応している点も魅力といえるでしょう。
AIピカソ
AIピカソは、プロンプトと呼ばれる単語を入力して画像を生成したり、自分の写真を複数枚登録することで専用のアバターを作成したりできる、生成AIスマホアプリです。
Stable difusionを利用しています。
有名なフリー素材の「いらすとや」の画風を習得しているということでも有名になりました。
画像の商用利用も可能ですが、無料プランの場合は広告を見ることが条件です。
写真を1枚入力するだけでダンス動画を生成してくれる機能をリリースしたことで話題を集めたサービスです。
まとめ
生成AIの仕組みや活用方法などについて解説しました。
CHATGPT以外に、テキストで内容を入力することで簡単に画像が生成できる画像生成AIが急速に進展しており、無料で利用可能なアプリもあります。
今後は生成AIがより一般的に利用できるようになるといわれていますので、チャレンジしてみてはいかがでしょう。