高コントラストできれいな画質が人気の有機ELディスプレイですが、発売当初から焼き付きが起こりやすいといわれ、WEBやSNSなどにも多くの投稿がされました。本記事では、有機ELがなぜ焼き付くのかその仕組み、予防法や対策、購入時の留意点などを解説します。
目次
有機ELに焼き付きが発生する原理
有機ELでは焼き付きが避けられないといわれますが、なぜ焼き付きが発生するのでしょうか。以下では、有機ELで焼き付きが発生する理由を、有機ELの仕組みや原理から掘り起こして説明します。
∟中見出し:有機ELはサブピクセルでディスプレイの画素を表現している
有機ELディスプレイの発光方式には、大きく2つの方式があります。いずれも、ディスプレイ上の画素を光の3原色であるRGBに対応するサブピクセルで表現しています。
RGB塗り分け方式
RGB塗り分け方式では、各画素にRGBそれぞれの色を発光する素子を配置し、その発光量の組み合わせで色を表現します。素子の前にフィルターなど余計なものがないため、効率よく発光させることができ、色も鮮やかにできるのが特徴です。
カラーフィルター方式
カラーフィルター方式では、白色光を発する素子をバックライトとして使用し、その前にRGBのフィルターを配置してカラーを作り出します。素子はRBGごとに配置して発光量を調整します。このため、黒の再現性がよく根トラスも高い画像を作り出せます。
ただし、フィルターを配置しているため、発光量のかなりの分を捨てることになり効率が良くないのがデメリットといえます。
製造方式
なお、パネルの製造方式には、基板上に素材を蒸着させる蒸着方式と、基板に素材を印刷する印刷方式の2種があります。印刷方式の方が製造装置はシンプルにできコストも低減可能なのですが、素材のインク化などが難しく、技術的には蒸着方式の方が簡単で実用化も先行しました。有機ELパネルは当初はLG1社しか製造していませんでしたが、蒸着方式+カラーフィルター方式を採用しています。
焼き付きの原理=素子の劣化
焼き付きとは、同じ画像を長時間表示したままにしておくと、表示を切り替えても以前の画像が残像として表示されたままになる現象です。原因としては、以下の2つがあります。
素子の劣化
長時間同じ画像を表示すると、画像表示に使用される部分の素子は一定の状態で発光しっ放しとなります。このため、他の部分と比べて劣化が早く進行し、正しい色での表示できなくなってしまいます。その結果、残像として以前の画像が見えてしまうのです。
素子の電荷バランスの偏り
長時間同じ画像を表示すると、画像表示に使用される部分の素子に電圧かかかったままの状態となり、電荷が偏ります。この状態が長時間続くと、画面を切り替えても電荷バランスが元に戻らなくなってしまいます。その結果、残像として以前の画像が見えてしまうのです。
特に赤色の素子は劣化が早い
LGディスプレイ社が調べたところ赤画素の利用頻度が高く、そのため劣化も早いということが分かった。その対策として、2018年以降のモデルでは、赤画素の面積を従来のモノより大きくしているということです。
【注意】焼き付きは故障ではなく保証外!?
有機ELディスプレイの場合、メーカーは、焼き付きをディスプレイの特性であり、故障や不良として扱わないという方針であり、説明書などでもその旨を明記しるケースが多いです。
また、保証書などに焼き付きは保証の対象外と明記している場合もあります。有機ELディスプレイを使った製品を購入する際は、保証での扱いをきちんと確認しておくことが必要です。
これって焼き付き?テレビやスマホのディスプレイの確認方法
焼き付きが気になる場合は、焼き付きが発生していないかを確認したくなりますね。以下では、焼き付きが発せしていないかを確認する方法を説明します。
確認法①しばらく待ってみる
焼き付きの原因として、素子の電荷バランスの偏りというものがあります。この場合は、電源を切ってしばらく放置しておくと解消する場合もあります。あるいは、さまざまは映像を表示させることで自然と解消されることもあり得ます。
確認法②チェックしやすい画面でディスプレイ上を比較してみる
有機ELの焼き付きを確認するための動画が、WEBやYoutubeなどでいろいろと公開されています。自分の機器で使いやすいものを使ってチェックしてみてください。Youtubeにアップされている画像の例はこちらです。
焼き付きが起こる時間はどれくらいか
有機ELは、輝度半減期では1万時間以上、発光しなくなるのは3万時間程度と言われています。実際に焼き付きが目立つようになるのは、どのくらいの時間使った場合かについて、口コミなどで報告されている事例を紹介します。
個体差が大きい
有機ELディスプレイの構造上、素子の劣化などで焼き付きは避けられないのですが、実際に焼き付きが目立つようになる時間がどれくらいかということは、一般的な数字は見当たりません。また、各機器の個体差(製品の歩留まり)によっても異なるようです。運悪くはずれの商品にあたった場合は、比較的早期に目につくようになります。
【実例時間】Nintendo Switch
Nintendo Switchで焼き付きを7000時間かけてチェックしたという報告があります。
この検証報告では、焼き付きは画面が白色の場合には目につくが、暗い画面では気にならない程度ということです。
【実例時間】Galaxy S8(スマホ)
1.5年程度使用したスマホのGalaxy S8では、焼き付きが確認できるほどになってしまったという投稿がWebにアップされています。
スマホの画面全体を白色表示した際に、ナビゲーションバー境目・ホーム・メニューボタンなどがうっすらと焼き付きとして見えるという写真がアップされています。
【実例時間】VIERA(テレビ)
パナソニックの有機ELテレビのVIERAでは、2018年ごろに、使用して半年ほどで、画面中央に大きな焼き付きが出たという口コミが報告されています。ただし、初期不良であった可能性もあります。
焼き付きの直し方
焼き付きの初期段階なら、以下のような直し方を取り入れることで焼き付きを解消することができます。また、焼き付きが目につくようになる前に、これらの直し方を実行することで、焼き付きの予防効果も期待できます。いかでは、おもな直し方を紹介します。
【テレビ】ディスプレイのクリーニング機能
有機ELのディスプレパネルの素子は、同一状態が長時間継続すると電荷バランスに偏りが生じ、焼き付き(残像)の初期状態を呈するようになります。
有機ELテレビでは、ディスプレイメンテナンス機能として、そうしたディスプレイ素子の電荷バランスを修復するクリーニング機能を備えています。
焼き付きが気になり始める前に、定期的に、クリーニングを実行するとよいでしょう。クリーニング機能の名称や操作は機種によって異なりますので、各機種の説明書を参考にしてください。
【スマホ】アプリの使用
有機ELディスプレイのスマホで焼き付きが発生してしまった場合、Androidスマホであれば、液晶焼き付きワイパーという焼き付きを解消することを目的としたアプリを使うことも考えられます。
ただし、装置自体を修理するのではなく、ディスプレイ全体に単色表示を繰り返すことで、焼き付きを目立たなくというものです。結果的には、ディスプレイ自体の寿命を縮める恐れもあるので、使用する場合は自己責任で行ってください。
【テレビ・スマホ】修理依頼
基本的に、焼き付きはメーカー保証の対象外となっています。テレビやスマホでは、1年間の保証が付いていて初期不良は無償で修理や交換が可能ですが、焼き付きは対象外なので注意が必要です。
このため、焼き付きが発生したディスプレイの交換は有償での修理となります。購入時に有料の故障サポートで焼き付きに対応しているかを確認して、対応している場合はサポートを付けるのを検討してみてもよいでしょう。
焼き付きを起こさないための対策
有機ELテレビでは、その構造の点から、焼き付きを完全になくすことはできません。しかし、焼き付きが起こりにくくするように、使い方などを工夫することはできます。
ちょっと、気をつければ、焼き付きを防げるのです。以下では、焼き付きを起こしにくくするための対策を5つ紹介します。
【対策1】ディスプレイの明るさをあげすぎない
有機ELテレビでは、素子が発光することで映像を映し出しています。そして、ディスプレイを明るくすればするほど、素子の発光量も増えていきます。
これは、いわば素子を酷使することになり、素子の劣化を早めることになりかねません。適度な明るさで見るように心がけることで焼き付きを防げるのです。
【対策2】長時間変化のない画面にしない
画面に同じ映像を映し出すためには、その部分の素子は、その期間発光しっ放しになります。これは、対策1でも述べたように、素子の酷使につながり、焼き付きを促すことにもなりかねません。
有機ELディスプレイを長く使いたいのであれば、なるべく、こうした長時間同じ映像を表示しっ放しにするような使い方は避けるのが対策として有効です。
【対策3】風通しの良い環境に置く
ディスプレイの素子は発光するため熱を持ちます。そして、熱がこもることは素子の劣化を早める原因ともなります。ディスプレイ側でも放熱対策は考慮して作られていますが、設置場所を風通しの良いところにすることも焼き付きの対策として大事です。
【対策4】リモコンで消す(テレビ)
有機ELテレビでは、番組の視聴を終えてテレビを切った後も、実は焼き付き防止などメンテナンスのための動作を行っています。そのため、いきなり、電源ケーブルをコンセントから抜いたり、ブレーカを落としたりして、テレビに電気を供給しないようにすると焼き付きなどの不具合を誘発する恐れがあります。
テレビを切る場合は、リモコンでオフするようにしましょう。
【対策5】ダークモードを使用する(スマホ)
有機ELの特徴は、黒色の表示には素子を使わないことです。そのため、スマホではダークモードで画面を表示すると、素子の消耗を抑え、結果的に焼き付きにくくすることにつながります。
最近のスマホはダークモードを標準で搭載していますので、有機ELタイプのスマホを使っている方は、ダークモードを利用すると焼き付きしにくくできます。
まとめ
発色が良いことなどから人気が高まり、また、製造方法も進歩して価格も手ごろなレベルに届きつつある有機ELディスプレイ。その大きな欠点のひとつは、焼き付きを避けられないことです。
本記事では、有機ELディスプレイで焼き付きが避けられない理由、焼き付きが発生しているかの見分け方、焼き付き対策を紹介しました。参考になれば幸いです。